ハドリアヌスに出会う前までのANTINOOについてはほとんど知られていない。ビテュニア（小アジアの一地方）はクラウディウス市（現ボル)のMantiniumという町で出生した。ANTINOOは130年10月に死んだことが分かっており、彫刻の容姿からこの時20歳以下であったろうと推定されることから、生年は110年から112年に位置づけられる。

ハドリアヌスと出会った場所、年代について書かれた書物はない。ハドリアヌス帝がクラウディオポリスを訪れた123年冬か124年春であった可能性が高い。ハドリアヌスのお気に入りとなったが、皇帝の取り巻きとしての存在が公式に言及されるのは、ハドリアヌスがエジプトに旅行した130年になってからだった。10月（25日と思われる）、ハドリアヌスは、ナイル川で溺死してしまったこの青年を見つける。ただしその状況については謎に包まれたままである。ハドリアヌス自身がこの事故を引き起こしたのだとか、ハドリアヌスの治世が長引くようにと、ANTINOOが進んで自らを生贄に捧げたのだといった説明が、古代からなされてきた。

ハドリアヌスはこの青年の死をひどく悼んだ。エジプト人はナイルで溺死したANTINOOにオシリスの従者のイメ−ジを抱き、この若者を神格化した。ナイル川沿いにAntinoupolisという街を建設するほどであった。ギリシャ人はANTINOOの内にヘルメースの化身を認めた。131−132年には、青年に限定して体操と音楽の競技、Antinoeiaという祭典が創設された。 クラウディオス・プトレマイオスの
『アルマゲスト』にも言及されており、現在わし座となっている5つの星が構成する星座にANTINOO座の名称がつけられた。ロ−マにおいては最初冷たく受け止められたものの、徐々に信仰の対象として馴染んでいった。キリスト教到来前に加えられた最後の偉大な信仰対象となった。

第1部

ローマから北東に31キロの郊外に＜ANTINOO＞を寵愛したハドリアヌス帝の別荘がある。2007年のローマでの個展の折、六華天目釉＜ANTINOO＞の名付け親、ラウラ・モナケーシ女史（アンティノー美術財団理事長）とその別荘 を訪れた。
5月の美しい緑と風。広大な丘陵地の硫黄泉とテムベーの谷。青い運河に並ぶ女神像柱の美しさ。これらの風景は西暦134年に私をタイムスリップさせた。

第2部

ローマ帝国五賢帝の一人、ハドリアヌス皇帝（在位紀元117〜138年）の寵愛した美少年＜ANTINOO＞がエジプトのナイル河周航に同行した折、占い師が予言した皇帝の死を阻止する為、ナイル河に身を投じ自ら犠牲になった。
皇帝はその美しさを神格化し、＜ANTINOO星座＞として永遠に残そうとした。

岩井純の六華天目釉薬の釉調が、その天空の星座を想像させるとして＜ANTINOOの星＞と命名された。
5月の爽やかな午後の展覧会のオープニング。　たわわになるオレンジの木が美しく、香がたかれた内庭は、喧騒のローマ市中とは思えないひんやりとした静寂さが印象的でした。

第3部

・ヤマザキマリblog
　　(漫画　『テルマエ・ロマエ』の著者　ハドリアヌス帝とANTINOO登場)


・Youtube
　　Villa Adriana(Tivoli)世界遺産

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